それまで世の中に存在しなかった、ピアノ演奏用の靴を考案・商品化した倉知真由美さん。娘さんがピアノを練習する姿を見て、「ペダリングがもっとスムーズにできたら…」と考えたことが出発点でした。商品化に当たり、特許を申請する上で、ヒール部分の高さやカーブの角度(R)などを数値化する必要があることを知ります。「まずは試作だ、と木くずを削ってヒールの模型を作り、上履きに貼ろうとしましたが、うまく貼れなくて。しばらく放置していたんです(笑)」。それを見つけた娘さんがヒールの模型に、上履きを乗せてピアノを弾き始めました。「ママ、コレいいよ」と話す娘さんの足元を見ると、模型がかかと部分よりつま先方向にずれていたそう。そこでヒールの位置も使い心地に関係することに気付き、さらに試作を重ねます。その後も工場探し、補助金申請、事業計画の立案…と次々に浮かび上がる課題に「くじけそうになりましたが、一方で『絶対やってみせる』という強い気持ちもあって。たくさんの方の助けも頂きました」。そんな折、自作のPR動画をきっかけに大手楽器店から商品の発注が舞い込みます。以後、着実に売り上げを伸ばし、今年は海外へも進出と大躍進!
実はこれまで、ほぼジャージ姿で過ごしていたという倉知さん。起業に当たりアドバイスを受け、スーツにスカーフという現在のスタイルに。「これ(スカーフ)を巻くと仕事のスイッチが入ります。今ではなくてはならないアイテムですね」と笑います。ちなみに、倉知さん自身はあまりピアノを弾かないそう。「逆に弾けないから(専用シューズの)アイデアが浮かんだのかもしれません。ピアノを教えてあげられない分、環境を整えようといつも考えていたし、ピアノの練習をしている娘の脇で体育座りをして聴いていたから、足元に目がいったんですよね」