2018年9月22日

 

~妥協せずこだわりを追求する~

 

【ゲスト社長】石山宣伝研究所 石山 理さん

 

2代目社長であり、お隣の利根町ご出身の石山さんに業界の転換期と同時期の事業継承、そして現在のデザイナー兼経営者としてのお話を伺いました。

 

「石山宣伝所」はお父様が取手に設立し運営していたデザイン会社。石山さんご自身もお父様と同じくポスターやシンボルマーク、看板や広告などのデザインが専門。また、双子のご兄弟も同じジャンルのデザイナーというまさにデザイナー一家です。

石山さんご自身のデザイナーとしてのキャリアスタートは都内からで、20代後半で事業を継承するためにお父様の会社へ新入社員として入社します。当時を振り返り「大きな決意などは特になく、若かったこともありただ漠然とした思いでしたね。」とのこと。

現在のデザイン業界はパソコンでの作業が当たり前ですが、石山さんがデザイナーとしての活動をはじめた当初の媒体は“紙”に“手作業”。

「紙媒体で仕事をしていた最後の世代」と語る石山さん。デザイン業界も紙からパソコンでの作業が必須となる転換の時代。在籍していた都内の会社でパソコンを勉強していたこともあり、お父様の会社にとって「事業継承前提の新入社員が新技術と共に入ってきてくれた!」という、まさに絶好のタイミングでした。

吉田も当時を「デザイン業界でパソコンにシフトチェンジできなかった会社は次々と廃業していった。」と振り返ります。

創業者であり、熟練のデザイナーでもあるお父様。新入社員であり、都内で最新の感性を磨いてきた2代目の息子。親子とはいえデザイナーとしての考えやセンスの違いで意見の対立はあったもののお二人での会社運営は20数年の時を経て、現在お父様は引退され、お一人で経営されています。

 

 

顧客の半分は取手や周辺地域から。残り半分は都内などエリアを問わず。ホームページの作成などパソコン上でやりとりができるので地域は問わないとのこと。お父様の時代からのお客様も大切にしながらも、今ではご自身の時代からの顧客が殆ど。「営業力はないですよ。」と苦笑いしながら謙遜されていましたが、知人からの紹介で依頼されるお仕事も多く、ご紹介いただいたお仕事は人を介さず直接ご自分自身で手がけられるそうです。

さて、デザイン業界に置けるパソコン普及の黎明期を時代に即して生き残った石山宣伝所さんですが、現代社会で商業シーン以外でも大きく活用されているSNSでの宣伝は?「FACE BOOKページを設立しているものの、いつの間にか更新しなくなっちゃいましたね。」と。意外な答え!?

お仕事は季節によって波はあるものの、口コミでお仕事を頂けていてSNSをやっている時期とやらなくなった現在も特に変わりないそうです。「FACE BOOKページもある種の口コミやからなあ。」と吉田も応じます。口コミは時代を問わず普遍の広告媒体、という典型的な事例ですね。

特に忙しい時期は夏で、イベントごとも多く、この他に自治体などの広報物も手がけられるそうです。自治体のお仕事は入札で決まり、それらに関わる諸手続きもお一人でなさるそうです。当然と言えば当然ですが事務能力も求められますね。

感性を武器にするお仕事という印象が強いデザイナー。お仕事が忙しくない時期はご自身の作品製作に打ち込んだり、美術館や博物館など様々な良いものを見て感性を養うそうです。

 

 

参加者の中からは「暇な時期にも仕事があるように動かなきゃいけないのでは?」というご質問もありましたが吉田は「アウトプットばかりじゃなく、インプットする時期も大切」と話します。

デザイナーとして大切にしていることは、「顧客の予想以上のものを提案すること」。もちろん、顧客の要望を聞いた上でのご提案ですが、作品にはどうしてもデザイナーの好みが反映されるもの。その上でデザイナーである自分自身が良いと思ったものを提案すること。最終的にそのデザインを顧客もいい、と言ってくれるので、と。

例えば、石山さんに仕事をオーダーした場合、どんな提案をしてくださるのでしょうか?顧客からの漠然とした注文…例えば「今使っているものはカタいので、もっとポップにして欲しい」という顧客の要望から3案ほど提案。そこからアイデアを盛り込み、膨らませていくそうです。

石山さんのデザイナーとしてのセンスは大前提として、その根本にある顧客に対してのきちんとしたご提案やデザインに対しての真摯な想い、誠実さが垣間見えるからこその“顧客の納得と満足”なのだろう、とあらゆる職業に通じる大切なことを垣間見た気がしました。

これから起業する方に向けたアドバイスと大切にしていることを教えて頂きました。「人と人とのつながりが一番大切かなと思います。」

様々な団体に所属すると様々な業種の方と出会える。若い頃からJC(青年会議所)や商工会青年部など様々な団体に在籍し、人と人との繋がりを大切にしてこられた。団体には色々な業種の方もいるので、自分の困った事もそこで出会った方に相談できるし、逆にデザインに関する相談をされ、そこから仕事に発展することもあるそうです。

今後の展望については「展望ではないけれど、デザイン業界は新しいことをやらなければいけないという考えもあるけれど、自分はそれをせずに今やっていることをもう少し磨きをかけてやっていこうかなと思っています。」とのこと。

“温故知新”という言葉が、石山さんとの話から浮かんできました。

 

 

 

ファシリテーター・レポート:フリーアナウンサー 小村悦子

写真:宇津井写真事務所 宇津井志穂

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