2017年10月12日
~「ワンちゃんと楽しく過ごすために」~
【ゲスト社長】いぬのようちえん るみえーる 前川仁美さん
「たまたま」に隠れる成功の秘訣
今回ご登壇いただいたのは、取手市戸頭で犬の預かりとしつけ教室を営む「いぬのようちえん るみえーる」の前川仁美さん。
富山県出身の前川さんは、茨城県土浦市にある専門学校を卒業後、2年前に取手で起業しました。
現在は戸頭の一軒家を借り、1階で犬の預かりやしつけの事業を行っています。
「どうして茨城に来たの?」や「何で取手を選んだのですか?」といったファシリテーターや吉田センター長、参加者の皆さんからの質問に対し、前川さんは何度も「たまたま」と答えていました。
ところがこの「たまたま」には、成功につながる大きなポイントが隠されていました。それはどんなポイントなのでしょうか?
■「犬を飼えない」悔しさが進路を決めた
私が犬を好きになったのは高校生の時。それまでは一度も犬を飼ったことがなかったのですが、たまたま遊びに行った友達の飼っている犬がすごく可愛くて、羨ましくなったのがきっかけでした。
しかし親に相談しても飼わせてもらえず、飼えない悔しさが動機付けとなって「じゃあ犬の学校に行ってやろう」と進路を決めました。
茨城県に来たのは、たまたま、土浦市にある専門学校へ進学したことがきっかけです。富山にも犬の専門学校はありましたが、人も犬も遠慮しながらやっているような小さな学校でした。その後名古屋と東京の学校を見学に行き、東京に来たついでに近場の学校にも行ってみようと土浦へ。その学校は見学した中で一番大きく、犬種も多くて楽しそうだったので土浦の学校に決めました。
■自分のやり方でやってみたい
卒業後は犬のしつけ教室の仕事に就き、その後卒業した専門学校から声をかけられ、その学校で教師をしていました。
起業のきっかけは、自分で犬を触りたいという想いが強く、自分のやり方でやりたいと思ったことでした。
専門学校での教師は、犬を教えるというより人を教える仕事であり、その前に務めていたしつけ教室は、お店の方針や考え方に従ったやり方しかできないことに不満を感じていました。しかし他のお店を探したところで、方針に従うことには変わりありません。それなら自分なりにやってみようと思い、起業することにしました。
■事業をするために取手へ
両親や友人には富山に帰ることを勧められました。富山にはしつけや預かりのお店が少ないので、始めてみたらいいんじゃないかと。しかし富山は犬を飼っている人が少ないんです。散歩をしている姿もほとんど見かけません。そのなかで犬の仕事をするのは難しいと思い、富山には帰らないと決めました。
はじめは牛久で事業を始めるつもりでした。知り合いがトリミングのお店をやっているので、近くで始めればお客様も紹介しあえるし、何より知り合いが近くにいる安心感がありました。しかし自分にあった物件が見つからず、他の地域を探すことになりました。
地域を選ぶにあたっては、市町村が公表している犬の登録頭数を調べたり、車を走らせながら、散歩している人や犬を車に乗せている人の多さを調べました。その時、守谷や取手は犬を飼っている人が多いのに、しつけ教室が少ないことに気がつきました。たまたま、今借りている物件が見つかったこともあって、取手で事業を始めることにしました。
■ワンちゃんが行きたくなる「いぬのようちえん」へ
一日の預かりは8頭までと区切っていて、月の半分程度はご予約を頂いています。
創業2年目ですが、これまでに30頭程度をお預かりし、2回以上のリピート率は8割以上になります。
入園いただいたお客様には、特典として通園バッグを差し上げています。3回目~4回目くらいになると、通園バッグを見せると犬が喜んでくれると言って頂けます。
お客様にとっては、しつけ教室で噛み癖や無駄吠えが治るよりも、ワンちゃんが喜んでくれることが嬉しいそうです。
るみえーるには、本当の“犬”の先生がいます。犬の先生は私の愛犬で、初めて来たワンちゃんが馴染めるよう先生をしてもらっています。先生がいることで行動を真似するようになります。
ワンちゃんをお預かりしながら、治したらいいことを一緒にしつけています。るみえーるが一番トレーニングしているのは遊びの練習と我慢の練習です。我慢の練習をすることで、お家でも我慢できることが少しずつ増えていきます。
■これからもたくさんのワンちゃんと出合えるように
一番辛かったことは、パニック状態になってしまうワンちゃんを預かったことでした。最初は穏やかだったのですが、慣れてくるとぶり返してしまい、他の犬を噛もうとしてしまいました。噛まれそうになったのは私の愛犬で、お預かりしている犬ではなかったので良かったのですが、自分の力で押さえつけられるギリギリの大きさのワンちゃんだったこともあり、はじめて自分からお断りをしてしまいました。
良くなりそうな矢先だったこともあり、お客様の期待に応えられなかったことがとても辛かったです。
一番嬉しかったことは、「先生のところに預けていて良かった」と言ってもらえたことです。そのお客様のワンちゃんは高齢で、病気で入院もしていたので筋肉が衰え、あまり歩けない状態でした。お客様も、もう歩けないと思っていたので、ずっと抱っこをして飼っていました。
いまは走れるくらいに元気になり、楽しく散歩をしたり、お客様におもちゃで遊んでいる動画を見せたとき、「先生に預けなかったら、この子はこんな楽しみを味わえなかった」と言ってもらえたことがとても嬉しかったです。
今後は、施設や規模を大きくして従業員を雇えるようになりたいと思っています。加えて、トリミングにも対応できたらと思っています。もっとたくさんのワンちゃんと出合えるように頑張ります。
「目的指向型」ゆえの合理的な判断
さて、ここまで読んでいただいた皆さんは、前川さんの「たまたま」に隠れたポイントに気がついたでしょうか?
そう、前川さんは「目的指向型」。
どうして土浦の学校に?といえば、自分が思うような学校が土浦にあったから。自宅から遠いとか、茨城県という知らない土地だということも気にしません。目的指向型の彼女は、自分の目的に合った場所に行こうと決めます。
事業場所に取手を選んだのも、調べた結果、取手にビジネスチャンスを見出したから。
自分でも気がつかないうちに自分の目的を合理的に判断し、進んできた結果を「たまたま」と言っていたんですね。自分が意思決定をしていく中で、不安や場所へのこだわりなど、さまざまな雑念を整理して合理的に意思決定をしていくことが成功につながるということがポイントになった今回の社長塾でした。
ファシリテーター:フリーアナウンサー 高木圭二郎
写真・レポート:JAMWorks 宇津井志穂