2018年2月13日
~伝統を楽しむ あられ・おかき専門店~
【ゲスト社長】歌舞伎あられ池田屋 池田 裕児さん
今回ご登壇いただいたのは、創業昭和8年の老舗あられ・おかき専門店の3代目社長 池田裕二さん。
仕事をするうえで大切にしていることは「楽しく仕事をすること」と語る池田さん。
伝統の味を守り、王道だけは外さないということ心がけながらも遊び心を加えて、あられ・おかき作りを楽しんでいます。
あられのもとはお餅。池田屋さんのあられはお餅が美味しいと評判です。
「今後はお餅の可能性を広げたい」と話す池田さん。あられ・おかきだけでなく和菓子やお餅カフェへの展開にも意欲的です。
楽しみながら伝統の味を守り、新しい事業展開を見据える池田さんを生インタビューしました。
■創業昭和8年、戦火を逃れて取手へ
屋号に「歌舞伎」とつくのは、銀座の歌舞伎座の裏にあるあられ屋で修業していた祖父が暖簾分けという形で屋号をいただいて、戦前に東京の巣鴨で直売店を開いたのが始まりです。昭和20年ごろに戦争で疎開、取手にやってきました。現在創業85年になります。
従業員はパートさん含めて18名。そのうち、商品をつくる職人は6名くらいで製造しています。
■こだわりの天日干しで、素材の味を引き出す
せんべいとあられ・おかきの違いって分かりますか?
うるち米で作るのがせんべい。もち米で作るのがあられ・おかきです。あられとおかきの違いは大きさ。大きいのがおかきで、小さいのがあられです。
当店の一番人気は定番の固めの醤油。現在は若い方をターゲットにしたさまざまな味を展開していて、そちらが支持されています。大洗のしらすや筑波山のふくれみかんなどの茨城のおいしい素材を使ったおかきや、その他たくさんのおかきを作っています。
おかげさまで、全国菓子大博覧会で名誉総裁賞をいただきました。
うちのこだわりは天日干し。うまみが生地にぎゅっと濃縮され、本来のもち米の味が引き出されます。今後はもっと工場で作られた味との違いをPRしてブランディングし、付加価値をつけていかなければならないと感じています。
■35歳で事業を継承
私は35歳のときに3代目として事業を継承し、今年で10年になります。
継承する3年前から先代に「早く代われ」と言っていたのですが、当時店は借金まみれ。しかし先代は私に一切そのことを言いませんでした。継承するまでに自分で返そうと思っていたようなのですが、借金が膨れ上がってしまい右も左も向けられない状態になっていたのです。
当時の借金は1億。対して売上は7~8000万しかありませんでした。
子供のころから親に事業を継げと言われたことは一度もありませんでしたが幼いころに兄が亡くなっていたので、自分が継ぐしかないとは思っていました。
大学を卒業後は丸彦製菓という会社で2年ほど修業し、製造全般を勉強しました。
25歳から自分の店で働き始め、「池田屋さんのあられ美味しいね」とお客様に言っていただける機会にふれていくうちに少しずつ商品や自分の会社に愛着が芽生えて、「美味しいあられを作ろう」と職人一筋で取り組み、衛生管理含め職場の環境も改善していきました。
当時の店は注文が来てから作り始めるような、生産管理を含めた基本的なことが全く出来ていませんでした。そのため事業を継承してからは生産管理の見直しから始め、経営の勉強をし直しました。決算書の見方すら分かっておらず、何となく理解したつもりで見ていたのだとその時気がつきました。
売上を上げるために営業もしましたし、寝ないで仕事をしたこともありました。最近ようやく実になって借金も3分の1程度になってきました。
今後は池田屋の商品を全国に流通させたいと思っていて、地元を代表する企業になれるように会社を成長させていきたいと考えています。
■これから起業をされる方へ
僕の場合は、10年間商品を作ることしかしてこなかったので時間がかかってしまったな。と感じています。もちろんその経験はかけがえのない財産になっていますが、売り上げが上がらず借金に悩んでいたころは寝ないで仕事もしたし、誰よりも仕事をしてきた自負があります。
しかしただ死ぬ気で仕事するよりは、いろんな人の話を聞いて勉強もして、しなくて良い苦労はしないほうがいい。
これから起業をされる皆さんには、「ちゃんと勉強したほうがいい」とアドバイスしたいと思います。
ファシリテーター:フリーアナウンサー 高木圭二郎
写真・レポート:JAMWorks 宇津井志穂