創業361年の老舗酒蔵の15代目ということですが、どのような思いで15代目を務めていますか?
私はいつも矛盾を抱えて、仕事をして、会社の運営をしています。
儲けるだけなら、もっと効率のいいやり方があると思うし、社会貢献するだけならボランティアでいいと思う。仕事をする意味をいつも問いかけています。
世の中って矛盾だらけでしょ。このお店を潰してしまったほうが、周りの人たちにとって利益があるんじゃないかと考えることもあります。ここを畳んで、マンションを何棟か建てたほうが取手市のためにはいいんじゃないのかなって。そのほうが、人が集まるかもしれない。住民税などの税収が増えるかもしれない。私が普通に会社を始めた人だったら、それでいいかもしれない。
でも360年間、私のご先祖たちは何かしらの思いを持って、やってきたはずなので。ご先祖たちだけじゃなくて、周りの人も支えてくれたはずなので。それを私のくだらないエゴでは辞めたくないと思います。「やっていく意味は何」って自分の中でいつも自問自答をしています。その中で私は、取手市民のみなさんに、「田中酒造店があって良かったね」と思われる蔵にしたいという答えに行きつくんです。
苦労があるから会社をやっていて楽しいんですよ。うちの税理士さんがいつも言う言葉です。
人それぞれ、大小はあるけれど、いろんな苦労をお持ちだと思います。その苦労が報われて、結果が出るから楽しいのではないでしょうか。
これから起業する人、独立する人にエールをお願いします。
会社、お店っていうのは自分の鏡みたいなものなので、今から起業される方は、自分を周りの人に見てもらうつもりで、自分のカラーの会社を起こしてほしいですね。そして起業をする意味を考えてほしいですね。