Vol.04 2016.07

取手の夏と言えば、「とりで利根川大花火」。今年で63回目を数える歴史ある花火大会です。昭和5年、利根川大橋開通を記念して始まりました。雄大な利根川の夜空に咲く大輪が、県内外から訪れる約10万人もの人々を魅了します。
こんな「とりで利根川大花火」を私たちが楽しめているのは、3つの煙火店のご活躍があるからこそです。
そこで今回は「とりで利根川大花火」の責任煙火店である髙城煙火店の皆様にお話をお伺いしました。

花火の醍醐味は何でしょうか?

髙城勇さん
見た目の美しさはもちろんですが、音、振動、匂いなど、全身で感じることができるところではないでしょうか。

写真や映像ではなく、生で体感してほしいですね。最近の花火大会は有料の桟敷席でご覧になる方も多いので、そんな方々にも「来て良かった」と喜んでもらえる花火を上げないといけませんね。

一発勝負ですから、ものすごい緊張感を抱くと思うのですが、いかがですか?

髙城勇さん
花火大会の準備中から打ち上げが終了するまで、緊張の連続です。

一番気を付けておられることはどういうところですか?

髙城勇さん
やはり安全第一です。花火を打ち上げることによって、観に来ているお客様が怪我をしてはとんでもないことですから。

準備している者も怪我をしてはいけません。怪我や事故がないように細心の注意を払って準備しています。

当日の現場だけではなく、製造工程の中でも怪我や事故が起こらないように、また被害を最小限に食い止めるようにされているのでしょうか?

加賀さん
製造中は、火薬の粉が飛び散ったりしますから、作業後に火薬の粉をかき集めて除去するように気を付けています。冬場は静電気にも注意が必要です。

髙城渉さん
製造所には防爆壁を設けていますが、他の建物・設備との間隔を一定以上あけないといけないという規則もあります。

危険が高い作業は、できるだけ少ない人員で行うように心がけています。

髙城勇さん
どこにいても後ろが開かないところには座らないようにしています。

万が一の場合、すぐに外に出られるようにね。爆風で後ろが開けば、助かる可能性もありますから。

命がけでお仕事をされているんですね。
製造工程について教えていただけますか?

髙城勇さん
最初の工程である「配合」はとても重要なんです。

煙火店によって違う部分です。いくつもの原料を組み合わせて、火薬を配合するのですが、配合の割合は門外不出ですよ。

原料の配分は決まっていますので誰が配合しても、同じになるようにしています。花火の色は配合した火薬によって決まるため、職人によっても色が違うので面白いですね。

赤でも暗い赤だったり、明るいピンクっぽい赤だったり。他店の花火を見て、「あの色はどうやって出すのかな」と考えてしまいますね。

配合薬から、花火の光のもとになる小さな火薬玉「星(ほし)」を作ります。火薬を何層にも重ねて作っていくんですよ。火薬をまぶして天日干しをするということを繰り返して、直径1〜2㎝くらいになるまで大きくしていきます。

打ち上げたとき、同じように飛び散り、一斉に発色し、一斉に消えていくのが良い星ですので、均一の大きさにしなければいけません。星づくりは、花火の命ですから少しずつ丁寧に、望む大きさになるまで行うんですよ。

まぶす火薬によって色が決まります。

髙城渉さん
星は天日干しをするので、作業が天気に左右されるんですよ。

天気予報を見ながらの仕事ですね。晴れた日の朝は7時ごろから作業します。でも天気が良すぎても作業しにくいんですよ。

熱くなりすぎると万が一のことが起こるのではないかと心配になり、敷いている莚(むしろ)ごと日陰に移動することもあります。

加賀さん
次に「玉詰め作業」です。半球形の玉皮(たまがわ)と呼ばれる紙製の容器の中に星を並べていきます。

中心には、着火して星を遠く飛ばすための「割火薬(わりかやく)」を詰めます。遠くへ飛ぶようにガスを発生させるのですが、花火の大きさによって火薬の量を変えるんですよ。

そして玉詰めをした半球形の玉皮を2つ合わせて1つの花火の玉にします。この後はクラフト紙を貼り重ねる「玉貼り」という工程です。

この玉貼りの「張り」も重要なのです。張りによって、花火が開いたときの大きさ、星が広がるスピードが決まってくるからです。張りを持たせるために、クラフト紙を貼って乾燥することを繰り返して完成です。

ご覧いただいた通り、ほとんど手作業ですね。電気を使うのは、星掛け機(釜が回転して、星を転がして作っていく機械)くらいですよ。

花火の製造工程はあまり進化していませんね。打ち上げ方法は、コンピュータ制御ができるようになって、進化しているのですが。

髙城勇さん
どの製造工程でも、どういう花火を打ち上げようかをイメージして作っていますね。

配合する段階から、どのような色を組み合わせるか、どのように色を変化させるか、どれくらい広がるようにするかなど、イメージしながら作っていますよ

完成した花火は、試し打ちをするのですか?

髙城勇さん
1つ2つ試し打ちをします。周辺1キロくらい何もないところに行きます。

火薬の着き方が良くなかったり、燃焼が遅かったりする場合がありますので。ダメなら調整します。色がダメで使えないものはないのですが、燃焼時間が長くて、燃え切る前に落ちてくるなど危ないものは使えません。

どこかの不具合で上手くいかないこともあるんですよ。

何年やっていても、毎日が勉強ですね。

完成した玉を保管しておくのも危なくないのですか?

髙城勇さん
倉庫の中に保管している玉は、なかなか火が着かないようになっています。

花火大会が近づくと導火線に傷をつけて、そこに火薬を盛って、どんな状態でも火が着くようにします。すぐに筒の中に入れられるように、玉を組み合わせて、箱に入れておいて、直前になると筒に入れます。

そして現地で筒を並べて、花火大会が行われるのです。

煙火店の皆様のご活躍があって、私たちは花火を楽しむことができるんですね。
それでは最後に、「第63回とりで利根川大花火」の見どころを教えてください。

髙城渉さん
8月13日のお楽しみということで。

ココだけの話ということで
少しだけ教えてもらえませんか?

加賀さん
今年2016年は「取手駅開業120周年」ということで、これにちなんだ花火も…。

これ以上は言えません。

髙城勇さん
去年より良い玉を作りますので、ご期待ください。
それでは8月13日を楽しみにしています。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました
第63回とりで利根川大花火
開催日時
2016年8月13日(土)
午後7時~午後8時15分
荒天の場合、14(日)、最大15(月)に順延
会場
取手緑地運動公園
(利根川河川敷:JR取手駅東口徒歩5分)
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