サラリーマンの家庭で育ったのでお店を持つとか、社長になるとか、そのようなことは全く頭になかったのが現実です。高校卒業後、大手リテイルベーカリー(店内に厨房を持つ店)にて職人として働いていたので、会社内で技術指導を任せられる役割につきたいと思っていました。しかし、経験を重ねるうちに価値観も変わり選択肢の一つとして独立をすることを考えることになりました。
一般的なパン屋は5時に出勤して9時に開店するのですが、うちは5時に出勤して6時半に開店しています。というのは、「出来る限り焼き立てのパンをお客様に随時お届けしたい」という思いからです。9時開店の場合、開店時に多くのパンを並べることができますが、焼き立てではないパンも並ぶことになります。通常より品ぞろえが少なくても良いからフレッシュな状態で提供できる方法を考えました。朝早くにそんなに多くのお客様が来られるわけではないですが、少しでも地域の方々のお役に立ちたいという想いが重要なのです。また、製造のスタッフがレジに行って、自分たちが作ったパンをお客様にお渡しするので、作っている責任を感じることができます。独立する上で重要なことはそのような想いがあることです。
現在9店舗を運営しておられますが、何店舗にしようという目標はあるのですか?
店舗を増やそうという計画、目標はそもそもないのが実情です。今やっている目の前のことに集中し目の前のお客様に喜んでもらうことが重要です。その中で、社会的に求められる様々なことにどのように対応し決断するかによって、結果として事業が広がるかどうかが決まるものと考えています。
個人商店であり続けることです。ある勉強会に参加した時に「経営理念」の重要性を学びました。「何のために仕事をしているのか」を明確にすることについて時間をかけて考えてみました。すると、店舗数が増えても、お客様とコミュニケーションをとって地域のお役に立つ個人商店であり続けたいという思いに改めて気づくことができたのです。「理念」はみんなで同じ方向に進めるための指針です。従業員たちにも理解してもらっています。