2017年12月12日
~飲食を通じて、社会の豊かさを追求~
【ゲスト社長】株式会社カンパーニャフードサービス 日暮直樹さん
今回ご登壇いただいた日暮直樹さんは現在52歳。
平成3年に取手市野々井で創業し、26期を迎えます。
現在は3店舗を運営し本店「カンパーニャ」では薪釜ピザとパスタを提供。牛久の店舗ではカフェ、松戸の店舗では手作りのパン屋さんを運営しています。
■ローマピザとナポリピザを一つの薪釜で
お店の特徴は400度の薪釜で焼くピザ。ほとんどのお店は厚い生地のナポリピザを提供していますが、カンパーニャでは薄い生地のローマピザとナポリピザの両方を提供しています。
ナポリピザは高温で短い時間で焼くため、生地がふわっと柔らかくなります。対してローマピザは低温でじっくり焼き上げるのが特徴。醗酵も焼き方も違う2種類のピザを一つの釜で焼くため、高度な技術が必要とされます。
どちらか一方の専門性に特化するより、両方をうまくやることを追求し、開発してきました。
主なお客様は主婦やファミリー層、最近では年配のご夫婦が増えてきています。「今度東京から孫が来るから、席をとってほしい」と連絡をいただくことも増え、感謝の気持ちを持って接しています。そのほか、結婚式の二次会やお子様の誕生パーティーなど、記念日のパーティーにお使いいただくことも多いです。
■つくば科学万博でのアルバイトを通じて飲食で独立を決意
高校を卒業後、コンピューターの専門学校へ進学しましたがついていけず、退学しました。その後、1985年に開催されたつくば科学万博で住み込みで働いていました。
万博では主にレストランやファストフード店で、焼きそばなどを作っていたのですが、そのうちに飲食に興味が湧き、「将来は飲食をやろう」と決意します。
私は「一度やろうと決めたことは絶対やるタイプ」の性格。どうしたら飲食で独立できるかと考えた時、大学へ行って経営学を学ぼうと決め、拓殖大学経営学部に進学しました。
卒業後はすかいらーくグループに入社し、当時7店舗しかなかったバーミヤンで2年間働き、飲食の基本を学びました。
独立したのは27歳。叔父の協力で資金調達し、現在の土地を手に入れて洋食レストランをオープンしました。当時の店は「海老新」という名前でした。
■洋食全般のレストランから専門店へ
創業当時は飛ぶ鳥を落とす勢い。半年間はこれから先どうなるかと夢見てましたね。高級車に乗って、何のために仕事してるかって、結局自分の欲のためじゃないか。と思いました。
ところが6年後には売り上げがどん底に。
何とか建て直しをしなくては。と考えていたとき、たまたま県内の北部でイタリアンを経営している夫婦と知り合い、「フランチャイズでうちの業態を一緒にやってみないか」と誘っていただき、今の薪釜ピザに転身しました。
■仕事を通して、人間性も育てて生きたい
スタッフは現在15名。厨房には3名、ピザを焼くスタッフが1名、フロアに4名を配置しています。
フライなどは揚げている間少しでも手が空くのですが、ピザというのは生産性が悪く、作っている間は2本の手が離れることができない。いかに総合で2本の手を4本に、時に6本へと変えていかないといけないので、ちょっと忙しい。ですが、それを覚えれば独立したときに全てが出来るようになる。スタッフにもそういった考え方をもって育てていきたいと思っています。
スタッフには、仕事の領域をまず決めて、スキルがついたら今度は領域の幅を広げ、伸ばしてあげることをしています。
まずは就業時間300時間で覚えること、500時間でやっておきたいこと、1000時間で到達するべきスキルは。という領域を、スタッフとのヒアリングを通して明確にしています。
1000時間のスタッフには、300時間のスタッフに対して、いかに500時間のレベルに上げてあげるかを指導させています。それだけ長く就業しているなかで経験したチャンスや嬉しかったこと、辛かったことを、若いスタッフに教えて伸ばしていくか。も仕事の一つとして与えています。
入ったばかりのスタッフがいきなり1000時間のスタッフの真似をしても、やり方は覚えてもあり方は覚えられない。あり方というのは店が目指していることや、こうやってお客様に喜んでいただいて、やりがいにつながるんだという考え方の部分。
あり方という土台が大きくなっていけば、やり方の部分はどんどん覚えていける。そうすると大きな三角形ができて、いわゆる生き方に変わっていくと思うんです。この仕事を通じてどんな自分になりたいのかを考えるようになり、「この仕事をやってよかったな」と思うようになる。
現場で一番お客様と接するのはパートやアルバイトさん。私の役割は方向性をおさえておくこと。
私があえてマニュアルを作らないのは、「私はこうしました」という自分を評価してもらう主張をするだけになってしまうから。もちろん評価しますが、それでお客様がどういう反応をしていたのか、どんな表情していたか。お客様に何をしたかではなく、何が伝わったか。を考えて行動してもらうようにしています。
■スタッフの活躍の場を広げて
スタッフの活躍の場を作っていくことが私の仕事だと思っています。叔父が私に道を開いてくれたように、今の店も、いつスタッフに任せてもいいと思っています。人生の最期を迎えたときに、「どんな想いでそれをやってきたのか?」ということが大事なんじゃないかと思います。
ファシリテーター:フリーアナウンサー 高木圭二郎
写真・レポート:JAMWorks 宇津井志穂