そば店を始めるに当たり、修業期間は長かったのですか?
つくばのそば屋で2年ほど修業をしました。そこの師匠は修業期間が9カ月だったそうで、「早く自分で始めた方がいい」と言われて8年前、32歳のときに開業しました。師匠に言われて心に残っているのは、
「そばは毎日打たないといけない」
という言葉。麺類の中でもそばは打つのが一番難しく、そば粉は生きていると言われるくらいその日の天候や湿度などによって状態が大きく変わります。そば打ちは手の感覚で覚えないといけないので、1日でも空くと感覚が鈍ってしまうのです。今でも毎日が修業ですね。
できるだけ多くの人に私のそばを食べていただきたいですね。最近は、そばを食べない人やそばの「食べ方」を知らない人も多いと感じています。その人たちにどうやってそばを楽しんでもらうかを考えています。
私の店では、茨城県産常陸秋そばを使用し、その日の分だけを毎日、手ひき石臼で自家製粉し、ひきたて、打ちたて、ゆでたてを提供しています。そば粉を手でゆっくりひいているため、1日30食限定です。経営者の知り合いには、商売人ではなく職人の考え方だと言われることもあります。
そば好きの方はそばそのものを楽しんでくださるのですが、そこまでそばが好きでない方にも食べていただきたいので、新メニューを開発したり、新しい食べ方を提案したりして、もっと多くの人たちにそばを楽しんでもらえるようにしたいと日々考えています。
「百聞は一見に如かず」
私の場合はその続きがあって、「百回見るよりも1回考えた方がいい。百回考えるよりも1回行動した方がいい」ということを心に留めています。実際に自分で行動してみないと分からないことが多いので、とにかく行動することを大切にしています。