乾燥したバナナを飼料に加えて育てた「バナナポーク」は、臭みが少なく、やわらかな食感。おいしさが違う!と評判の、取手が誇るブランド肉です。考案したのは、社長である安藤貴子さんの亡き弟。「豚の飼料の価格高騰に頭を悩ませていた生産者の助けになればと弟がフィリピンで、間引きされたバナナを豚が食べているのを見て、ひらめいたんです」。その味に感動し、たくさんの人に知ってほしいと、バナナポークと名付け、ロゴを作成。社員のユニホームも作りました。「バナナポークが、と畜業のイメージを少しずつでも変えるきっかけになれば」と熱を込めます。
実は安藤さん、ご両親が始めた日本畜産振興を継ぐつもりはなかったそう。スポーツ少女で学生時代はバスケットボールに励み、大学卒業後は体育教師に。会社の経理をしてほしいと母親に請われるまでの間、子どもたちの指導に当たりました。入社して驚いたのは経営状態の悪さ。「苦渋の決断で民事再生手続きを行いました。当時社長だった母とはぶつかりましたが、従業員のためにも会社を畳むという選択肢はなかったんです」。子育てをしながらの苦労もあったそう。安藤さんのはつらつとした笑顔の裏には、大変な時代を乗り越えた経験がありました。 安藤さんがもう一つのライフワークとして取り組んでいるのが、外国人技能実習生の受け入れです。2009年には日本語学校「つくばスマイル」を立ち上げ、優秀な人材の育成に尽力。他企業へ巣立ったあとも何かあれば、安藤さんに昼夜を問わず連絡が来るそう。それでも、将来の労働者不足を解消するために、絶対に必要なことなのだと話します。「対ヒトですから、それはいろいろあります。でも、一人一人を大切に、同じ目線で寄り添うことで、実を結んでいくと信じています」