~創業明治40年の老舗食品問屋さん~

 

2017年9月26日、第18回社長塾&交流会を開催致しました。どのようにして自分の会社を魅力的に感じさせたらよいかほとんどの方が悩みます。今回は、自分の会社を魅力的に感じさせ、いかにして相手に近づくかを考えた男性社長様をインタビュー致しました。

 

 

■別業界の営業マンから経営者へ

今回ゲストにお迎えしたのは、龍ケ崎市上町で食品卸問屋を営む「株式会社 長谷川商店」社長 長谷川紀之さん。明治40年に創業された卸問屋の4代目です。長谷川さんはもともと家業を継ぐ気がなく、東京の大学を卒業後は家具インテリアの営業マンとして10年間勤務していたのだそうです。しかし、10年間サラリーマン生活を続けているなかで心境に大きな変化が起きたのだとか。継ぐ気がないと思っていた家業を自分でやってみたいと思うようになったり、サラリーマンの収入はあまりお金にならないと感じるようになったり。さらには、当時父親が高齢で廃業へと傾いてしまっていた家業を自分の手で復活させたいと思うようになったそうです。32歳の時、家業で家族を養っていく覚悟を決めたと長谷川さんは語ってくれました。
家業を継いだ時、すでに廃業へと傾いていたのでマイナスからのスタートになったのだとか。しかし、10年間の営業経験があったことで後継した時にとても役に立ったと話してくれました。

■右も左も分からない・・がむしゃら時期

営業経験は10年間のキャリアがあったものの、食品業界のことは一切分からなかったと話す長谷川さん。ルールが分からないまま食品業界に飛び込んでいったので4~5年はがむしゃらに働いたのだとか。業界の寵愛が分からなかった為、「お客さんが喜んでくれたそれでいい」と思って必死に商売をしてきたと話してくれました。その結果、嫌われたこともあったそうで、ただ後になって思うと別の業界に10年間勤務していて食品業界を知らなかったことがかえってよかったと感じたそうです。
家業を後継した時、「あれをしたらだめだ」「もっと工夫をしないと」と今までやってきたことに対して否定から入っていったと話す長谷川さん。しかし、後継して10年経ったころ初めて「長谷川商店」の看板の重みを感じたそうです。歴史は大切にしないといけない、そしてその歴史を活かさないといけないと感じるようになったと話をしてくれました。

 

 

■既存客を残しつつ増やした新規顧客

長谷川さんが家業を継いで10年間に起きたこと。それは、それまでの売り上げよりも倍以上になったこと。そして、赤字を出さずに経営をしていること。この大きな変化の背景には、これまで取引先ではなかったスーパーやディスカウントストア、専門店にも営業をするようになったそうです。長谷川さんは、1年2年・・と経過していくと同時に10万が100万、100万が1,000万になればいいという考えをもっていたそうで、遠方まで行って営業をすることは苦ではなかったと語ってくれました。
取引件数を増やしていくにあたって、仲間からの紹介や社長間の紹介があって少しずつ結果を出していったと語る長谷川さん。さらには、最初の10年間は飛び込み営業を行い断られながらも足を運んだのだとか。すでに取引している企業がいるのを分かっていながら飛び込んでいくことは大変で、その中で長谷川商店の魅力を伝えていくことに必死だったとか。大手が扱っていない商品を扱うなど長谷川商店ならではを開拓していったそうです。取引したい企業の下調べは念入りに行い、事前に2~3回は店に足を運んでその店にあった提案を考えるのだとか。他社との競争に勝つために、メーカーとのパイプを太くすることや小回りの利く経営をしていると話をしてくれました。

■失敗から気付く「追求」の大切さ

販路拡大のためにECサイトの活用をしたそうですが、インターネット販売はかなり難しいと感じたのだとか。その理由として、参入がしやすいことの反面その商品にかなりの魅力がないとインターネットでは売れないと語ってくれました。インターネットでの流通が広まっているなかで、あえて長谷川さんはインターネット販売をやめたのだそうです。経営をしていく中で失敗もあり、長谷川さんの場合は本業以外のことを追求した時に失敗を感じたのだとか。本業を見つめなおし、追求していくことが事業を継続していくことにとって大切なことだと話してくれました。

 

■付き合いの大切さを感じた 東日本大震災

6年前に起きた東日本大震災。流通業界は大きな打撃を受けたと語る長谷川さん。当時はスーパーからの発注が多くなり、運送のためのガソリンが必要に。ガソリンを求めて大行列となっていたあの時、普段からお付き合いをしていたガソリンスタンドが優先的にガソリンを入れてくれたので無事に店へ商品を届けることができたと語ってくれました。その時に、付き合いの大切さを改めて感じたそうです。商品を集めることもピンチと感じる瞬間があったそうですが、ピンチはチャンスと感じその時期を乗り越えてきたと語ってくれました。

 

 

■想いを伝える月1回の会議

長谷川さんは、ご自身が社長になられてからあることを欠かさず行っているのだとか。それは、月に1度開催する会議。この会議では、普段はあまり話さないことをこの場で伝えるのだとか。内容はいつも同じで、「こうやりたいんだ!」「こうしたいんだ!」と想いを繰り返し伝えているのだそうです。

起業を目指すには、3つのことが重要だと長谷川さんは伝えてくれました。1つめは、この仕事で自分の家族を養うことや自分の社員を養う覚悟。2つめは、その仕事が本当に好きで楽しむことができるかどうか。そして3つめは、どうやっていきたいかの方向性(どうやって売り上げを伸ばすのかなど)を決めること。これが、長谷川さん自身が経営をしている中で感じたことなのだそうです。

消費者に一番近い存在はバイヤーであるため、長谷川さんのような卸問屋は、消費者との距離が遠いのだとか。その距離をいかにして近づけるかを考え、いつかは消費者の顔を見ながらの商売がしたいと目標を語ってくれました。

 

 

■最後に

今回、龍ケ崎市上町で食品問屋を営む「株式会社 長谷川商店」社長 長谷川紀之さんにお話を伺いました。事業の内容によっては、他の企業が扱っている商品と同じ商品を扱う企業があります。同じ商品を扱うなかで、いかに差をつけ相手に振り向かせるか。その「差」は重要なのかもしれませんね。その差のつけ方も常に本業を見つめなおすことで、自分にはどんな方法が合っているのかが見えてくるかもしれません。
長谷川さんのように、自分の会社ならではの「差のつけ方」で相手を振り向かせようとしている方にとって今回のお話は参考になったのではないでしょうか?商売の方法は真似るだけでなく、自分の会社にとって合っている方法か見極めることも大切です。ぜひ、今回のお話をご自身の経営に役立ててみましょう。

 

ファシリテーター:フリーアナウンサー 高木圭二郎

レポート:Fun Hands Writing しずたん

写真:JAMWorks 宇津井志穂

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