2018年1月23日
~2017年版『小規模企業白書』に掲載!ピアノシューズで特許取得~
【ゲスト社長】リトルピアニスト株式会社 倉知 真由美さん
今回ご登壇いただいたのは、世界で初めてピアノシューズを開発・販売するリトルピアニスト株式会社の倉知真由美さん。
起業のきっかけは、ピアノを習う愛娘。レッスン用の靴が滑りやすく弾きにくそうにしている娘の姿に、かかとを削るなどの工夫をして履かせていたところ、友人から特許を勧められ、ピアノペダリングに特化した専用の「世界初のピアノシューズ」として商品化することに。
経営に関してはもちろん、商品化・販売も初めてのことで軌道に乗せるには大変な道のりでしたが、2017年11月にMatch龍ヶ崎での法人化第一号に。グッドデザイン賞、経済産業大臣賞など、今、注目を浴びている経営者です。
■前職はCGデザイナー、主婦を経て経営者に
前職はゲーム機の「プレイステーション」の開発者としてグラフィックデザイナーをしていたので、販売の経験も営業経験もなし。本当は外に出ていくよりはパソコンの前で仕事をしているほうが好きなんです。
私はピアノを弾けないのですが、娘がピアノのコンクールなどで上位に入るほど熱心にピアノに取り組んでいました。ただ上位入賞者となると周りはピアノの先生の息子や娘ばかり。素人のお母さんがピアノを指導することは難しいので、演奏風景を動画で撮って二人で研究したりと、教えられないにしても環境を整えてあげたいと思ったのです。
そのとき、娘がピアノを弾いている様子を見て、靴が滑って弾きにくそうにしていることに気がつきました。靴を調整すればもっと上達するのではないか?それが、ピアノシューズをつくるきっかけとなりました。
■世界初のピアノシューズとして特許を取得
特許をとるには模型が必要でしたので、ホームセンターに行って廃材を入手し、模型を自作しました。しかし当時の私は経営者でもない普通の主婦でしたので、靴工場にピアノシューズの企画書を持って依頼しても門前払い。ピアノ専門の靴ということもあって利益もつかみにくく、業界の知識も経験もなかったので「売れるの?」「販路は?」と聞かれても答えられなかったんです。
そんな時、前職の同僚や先輩との飲み会で「ピアノシューズを作ってくれるところが見つからない」とぼやいていたら「ピアノシューズのイメージを3次元グラフィックで作成して、YouTubeにあげてみてはどうか?」とアドバイスをもらったんです。さっそくグラフィックを作成して動画をアップしました。それがテレビ東京の目に留まり、「ワールドビジネスサテライト」で取り上げられました。
するとすぐにピアニストたちからヤマハや山野楽器などに問い合わせがあり、大きな反響に!しかしその時はようやく生産工場が決まったばかりでサンプル品が出ているだけの状態、上代も決まってなかったんです。最初に出荷できたのは3ヵ月後でした。
現在の販路は全国の大手楽器専門店や百貨店、音楽の友社など。ネット販売などの取り扱いも増えています。
特許には維持費がかかるんです。自分の維持費でマイナスになるのは嫌だったので、「じゃあ起業しちゃおう」と思ったんです。
茨城県中小企業振興公社の「茨城県よろず支援拠点」に相談し、上代の考え方や事業計画など、とてもお世話になりました。
正直そんなに大きな事業をしようと思っていなかったのですが、靴の業界が分かっていくうちに「これは手に負えない事業だぞ?」と感じていくように。ただ、プレイステーションの開発の経験から「努力すればできる」と思っていたので、ここまでやってきちゃいました。
■ピアニストたちの活躍の場を増やしていきたい
今後は、バイオリン奏者の方からも要望があるのですが、音の鳴らないステージシューズを開発したいと考えています。
また、ピアニストたちとの関わりを通じて、演奏会の開催などのピアニストたちの活躍の場を増やしていきたいと思っています。
ファシリテーター:フリーアナウンサー 高木圭二郎
写真・レポート:JAMWorks 宇津井志穂