今回ご登壇いただいたのは、新規事業開発や法務の実務経験を活かして独立し、コンサルティング事務所を設立された箱山玲さんです。「実行可能な事業計画書」をテーマにお話いただきました。

 

箱山さんは、かつて新聞社の新規事業開発部門で約50のプロジェクトに携わっていました。最初は新しいアイデアを自分で生み出すのが苦手だと感じていたそうです。ゼロから何かを生み出す難しさを痛感していたそうですが、その経験を重ねる中で、「1を2、3へと発展させること」に自分の強みがあることに気づいたといいます。このように、ゼロから生み出すのが苦手だった一方で、既存のアイデアを発展させる力が自分にはあるという発見が、箱山さんのキャリアに大きな影響を与えました。

箱山さんが特に強調したのは、「事業計画書はアイデアを具体的に実行に移すための手段である」ということです。計画書では、「誰が」「何を」「どのように」という3つの要素を明確にすることが重要です。これにより、実行時に必要な情報が整理され、事業の実現性が高まるという考えが、彼の実務経験から裏付けられています。

 

箱山さんは法務の仕事で多くの契約書に携わる中で、企業のビジネスモデルを理解する力を養いました。契約書は事業計画書と同様に事業の骨格を示すものであり、「誰が」「何を」「どのように」という構成要素を持っています。この理解を深めることで、事業計画書の作成においても同じアプローチが効果的であると確信するに至ったとのこと。

セミナーでは、特に日本政策金融公庫の「創業計画書」を例に、事業計画書に盛り込むべき基本的な項目が紹介されました。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴
  3. 取扱商品・サービス
  4. 従業員
  5. 取引先
  6. 関連企業
  7. 借入状況
  8. 必要な資金と調達方法
  9. 事業の見通し

これらの項目を整理することで、事業全体の流れが明確になり、事業計画書は「誰が誰に何を提供し、どのように実行するのか」を把握するためのツールであることが再三強調されました。

 

また、箱山さんはこれらを3つの要素にまとめることを提案しました。

  1. 登場人物(誰が、誰に、誰と):事業に関わる全ての人々(顧客、取引先、従業員など)
  2. 商品・サービス(何を、いくらで):提供するものとその価格設定
  3. プロセス(どのように):事業を支える仕組みやプロセス

これらの要素を基に事業計画書を作成することで、事業の全体像が整理され、実行可能なものにできると説明されました。

さらに、セミナーでは「なぜ事業計画書が必要なのか」をテーマに、参加者とのディスカッションも展開。箱山さんは、PDCAサイクル(計画→実行→チェック→改善)の重要性を強調。事業計画書は目標を明確にし、実行可能な手段を示すための指針となります。これにより、計画がうまく進まない場合でも、計画書を見直しながら改善を続けられるのです。

 

また、事業計画書を通じて事業の成功を具体的にイメージすることが、成功確率を高めるとも述べています。イチローの小学生の頃の作文を引用し、ビジョンの重要性と、それを解像度高く持つことで、その目標に向けた行動がより効果的になると話されていました。

 

事業計画書は単なる書類ではなく、実行可能な計画を立てるための強力なツールであると箱山さん。登場人物、商品・サービス、そしてそれらを支える仕組みを整理することで、計画の実行がスムーズになり、事業の成功につながります。参加者は事業計画書の作成ワークを通じて、自らの事業を再確認し、具体的なアクションプランを立てることの重要性を痛感しているようでした。物腰やわらかく話される箱山さんのお話に、多くの方が頷かれていたことがとても印象的でした。

 

協力:起業家のための共学共創コミュニティ*とりでコネクテッド

レポート:柳葉崇志

 

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