Match取手廃業相談員の西澤です。前回は「廃業を誰に相談するのか?」について書かせて頂きました。相談する相手の候補には入れていませんでしたが、相談はしにくいのですが、必ず廃業をお伝えしない相手がいます。それは従業員さんです。事業を閉じるという一般的に考えるとネガティブな決断をどのように従業員さんに理解してもらうのかという事について考えてみたいと思います。

 

経営者と従業員さんの関係性は、それぞれの企業によって様々な形が存在しています。中小企業でも社長は神様なような存在で、従業員からすると話をする機会などめったにない会社もあれば、社長と社員がフラットにコミュニケーションを取れる会社もあります。その為、廃業の伝え方も様々なものがあって当然だと思いますが、私の経験の中から、気をつけた方がよいポイントについてお伝えします。

 

例えば、人事の面談などで社長と従業員さんがお話する内容は「これからの会社の方向性」や「目指していくキャリア像」といった会社や個人の未来の話になります。基本的に明るい未来を会社としてどのように作っていくかという事についてお話をする訳ですが、「廃業」は全く逆のテーマになってきます。

 

まず注意してほしい前提としては「従業員さんは廃業に慣れていない」という事です。経営者であれば廃業や破産について身近に感じていたり、取引のなかで間接的・直接的に関わっている事もあると思います。一方で従業員さんは廃業や破産という事柄に対して、経験値が圧倒的に少ないと言えます。この経験の差が「廃業」という事柄に向きあう時に、大きくかかわってくる事になります。お勤めされている多くの方にとって会社は「仕事をしにいくところ」「お給料をもらうところ」「ずっとあるもの」という認識ではないでしょうか。それが無くなってしまうという事に、「はい!喜んで!」すぐさま返答できる訳がありません。

 

従業員さんに対する廃業や破産の告知はどうしても急なものになってしまうケースが多いと思います。ただ、急な変化に対する適応力が社長と従業員さんでは大きく違うという事を理解した上で「廃業」についてお伝えしていく事が大切だと、私は思っています。何故なら私も事業を閉じるという事を本当に急な形で従業員さんに伝えてしまったからです。当然、現場に混乱を来す結果になってしまいました。

 

事業の責任者たる社長が廃業という判断を急遽しなければならない事も当然あります。ただ、出来るならば、日ごろの従業員さんとのコミュニケーションの中で、廃業という選択肢を選ぶ可能性について、じんわりと伝えておく方が望ましいです。会社の売上や利益などの経営指標を従業員さんと共有する中で、「この数字まで悪くなったら、廃業を検討しなければならない」といったように具体的な数字で伝えていった方が理解して頂きやすいと思います。それを1回だけでなく継続的に伝えていく事によって「ウチはこの数字になったらヤバいんだ」という事が理解してもらえるようになります。

 

また、廃業についてお伝えする現場には社長一人で臨むのではなく、専門家に同席してもらう事も検討した方がよいです。社長からすれば「私が直接しっかりと従業員に伝えたい」という気持ちがあるでしょうが、従業員さんの受け止め方はまた別のものがあります。税理士さんや弁護士さんなどの専門家に、客観的に会社や事業をとりまく環境や今後の取りうる選択肢についてフォローをして頂くと、従業員さんの理解の助けになってきます。

 

従業員さんへの廃業の伝え方は、それぞれの会社によって異なって当然ですが、「従業員さんは廃業に慣れていない」「出来れば急に伝えない」「専門家の同席がベター」という事をポイントに「あなたの廃業の伝え方」を考えて頂ければ幸いです。

<このコラムの著者>
西澤佳男 プロフィール
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過去の記事はこちら
廃業ってどうするの?中小企業ができる4つの廃業プラン
今できる廃業の準備“はじめの一歩”
廃業を誰に相談するのか?

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