Match取手廃業相談員の西澤です。前回は「従業員さんに廃業をどう伝えるのか?」について書かせて頂きました。廃業が身近な人にも相談しにくい話題なのは当然ですが、伝える事が避けて通れない相手が家族になります。

経営者の中にも家族に仕事の事を全く伝えない方もいれば、「今日はこんなお客さんがいてね、、、」などと気軽に話す方もいます。仕事の話題が家族の中でどんな位置づけになっているかは本当に様々だと思います。良いニュースであれば、家族に伝え易いですが、こと廃業に関しては悪いニュースの最たるものになります。当然、伝え方は一様ではないですが、私のケースを例に考えてみましょう。

私の場合、奥さんには仕事のかなり細かい事に関しても伝える関係性でした。それゆえ、廃業を意識してから毎日のように「どう伝えようか。。。」と悩んでいました。弁護士さんに廃業の相談をして、ある程度手続きの方向性が決まったある日の朝、思い立って、奥さんに話そうと決めました。出かける直前に立ち話で「実はね、、、」と切り出して、会社の置かれている状況と、今後取りうる手続きの方向性について話をしました。

最初に奥さんから出てきた一言は「それ、今いう事?」でした。当然だと思います。これからの家族の生活に大きな影響を与える廃業という事柄を伝えるには最悪のタイミングでした。それでも、しっかりと状況について時折、質問を挟みながら話を聞いてくれ、最後に言った言葉は今でもはっきりと覚えています。「色々言い訳してるけど、結局のところあなたの経営者としての能力がなかったって言う事だよね」仰る通りでした。

私の場合、タイミングや伝え方に関して本当に良くないパターンです。本来ならばしっかりと時間をとって、理解してもらいやすい環境をつくって伝えるべきでした。廃業に関しては相手に納得してもらう為に、段階を踏んでお伝えしていく必要があると、今となっては理解しています。

営業のシーンでは「アプローチ」「商談」「クロージング」というプロセスを経て、お客様に納得・理解して頂いて契約にいたる訳ですが、廃業の伝え方でも同じだと思います。まずはじめのアプローチの段階で一番大切なのは、「相手の聞く体制をつくる」事になります。私のように相手が忙しい状況を無視して、矢継ぎ早に事実を伝えていくのはダメな例になります。

黒川伊保子さんのベストセラー「妻のトリセツ」によると、女性脳は、体験記憶に感情の見出しをつけて収納しているので、ひとつの出来事をトリガーにして、長年の類似記憶を展開する能力があるそうです。廃業という家族にとっての一大事を粗末に伝えると、奥様のネガティブトリガーになって「あの時もあなたは、こう言ったよね!」といった形で大きな地雷を踏むことになってしまいます。特に相手が女性の場合は、相手に共感をすることにフォーカスして会話を続けていくことが大切になります。(男性経営者とその配偶者という事を念頭においた話で恐縮です。)

また、経営者が普段使っている言葉や業界の用語、また廃業の法的な手続きの手法などはパートナーからすれば馴染みのないものになります。全く知らない事を前提に、丁寧に説明する事が大切になってきます。廃業の手続きの最中は、未確定な要素が多く具体的なスケジュールが示しづらいのが事実ですが、複数の可能性を含めて、会社と個人の今後について丁寧に説明していかないと納得・理解が得られないはずです。

そして、パートナーが一番心配するのが、家族の生活を支える収入が途絶えてしまう事です。免責を伴う法的な手続きを取った場合には、個人の自由資産はわずかしか残せないですし、会社からもらっていた役員報酬もいずれストップしてしまいます。この事実は大きいです。しかし、廃業手続き後の収入の取り方については、可能であればある自分の考え方をまとめておいた上でパートナーに伝えた方がベターです。いつ収入がなくなるかは誤魔化さずに、正直に伝えないと、家族の関係性に大きな影響をもたらす事になります。

「相手の聞く体制をつくる」「複数の可能性を伝える」「収入が途切れるタイミングは正直にいう」が私の経験から得た、家族に廃業の事を伝える時に大切なポイントになります。廃業を家族に説明する為の正解はないので、相手に真摯にむきあって丁寧にお伝えしていくという軸をぶらさないことが、家族の関係性維持にとって必要なのではないでしょうか。

<このコラムの著者>
西澤佳男 プロフィール
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今できる廃業の準備“はじめの一歩”
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従業員さんに廃業をどう伝えるか

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